恥ずかしい思い込み

画像 私のバイクにはチョークレバーというものが付いている。エンジンを始動する時に使うものだ。
 以前は、自動車にもチョークが付いていた。形状からチョークノブと呼ぶことが多かったように思う。その昔、私の親友が乗っていた車、それはたしかギャランGTOだったと思うが、その車にもチョークノブが付いていたように記憶している。しかし時代とともにオートチョークになりチョークノブが消え、キャブレターからフューエルインジェクション(F.I.=燃料噴射装置)になり、チョークそのものがなくなった。
 今の大型のバイクや、大型でなくても最新のバイクはF.I.のものがあるので、それらにはチョークはない。F.I.車にもチョークレバー風のものが付いていることもあるが、それはチョークではなく、アイドルアップの役割を持たせたものらしい。スクーターなどはオートチョークを使っているものが多いので、やはりチョークレバーはない。しかし、私のバイクのような、少し前のオンロードやオフロードのスポーツバイクには、チョークレバーあるいはチョークノブが付いているのが普通だ。

 3月29日にこのブログに書いたように、いま体調的にバイクに乗るのがちょっとつらい。3月末から、体調はあまり好転していない。前に乗ってから約4ヶ月、ずっとバイクに乗らないでいた。エンジンをかけたこともなかった。しかし、たまには乗ってやらないと、バイクの調子が悪くなる。しかし乗るのが怖いので、せめてエンジンをかけることだけでもしてやろうと思った。
 バイクにはカバーを掛けてある。4ヶ月ぶりにバイクからカバーを外した。カバーを掛けていても、屋根がないところに駐めているので、埃でけっこう汚れている。絞ったウエスで埃を拭き取り、いざエンジンをかける。

 ふとチョークレバーを見ると、チョークが効いた状態になっている。なぜそんな状態になっているんだろうと思いながら、あまり深く考えずにいた。
 セルスターターのスイッチを押してみたが、スターターの回り方がとても弱々しい。バッテリーがかなり弱っているようだ。長い間乗らずにいたためだ。しかしそんな時でも大丈夫。私のバイクにはキックスターターが付いている。
 チョークを効かせ、10回ほどキックする。しかし全然エンジンがかかる気配がない。チョークを戻し、しばらく待つ。チョークを効かせっぱなしでキックを続けると、濃いガスでプラグがかぶり気味になるので、しばらく待ってプラグを乾燥させるためだ。そしてチョークを効かせ、再度10回ほどキック。しかしエンジンはかからない。そしてまた、しばらく待つ。
 それを20回くらいは繰り返しただろうか。もうこれ以上キックできないというくらい右足が疲れてきたところで、ようやくエンジンがかかった。しかしエンジンの回転が弱々しい。今にも止まりそうだ。わずかにアクセルを開いて、回転を上げる。エンジンが冷えている時に、アクセルを大きく開けるとストールする場合がある。そうなったら、またエンジンのかけ直しだ。注意深くアクセルを操作する。
 それにしても、なぜこんなに調子が悪いんだろうと不安になる。それに、いくら4ヶ月乗らなかったとはいえ、いくらなんでも始動性が悪すぎる。アクセルを軽くひねった後、チョークを少し戻してみた。するとエンジンの回転が上がった。ガスが濃すぎたのかなと思いつつ、もう少しチョークを戻す。するとさらにエンジンの回転が上がる。チョークを戻すに従ってエンジンの回転は上がり、チョークを完全に戻したら、エンジンは3000回転くらいで力強く回った。
 ここで私は、根本的な間違いをしていたことに気がついた。

 チョークを操作することを、一般的に『チョークを引く』という。その言葉通り、引いた時にチョークが効く。私のバイクも同じで、チョークレバーを手前に引くと、チョークが効く。しかし私は今日に限って、チョークレバーを向こうに押した時に、つまり戻した位置の時にチョークが効くと、なぜか思い込んでしまっていたのだ。
 つまり私は、チョークを使わないでエンジンをかけようと一生懸命になっていたのだ。どうりでなかなかエンジンがかからない訳だ。バイクによってはチョークを引かなくても簡単にエンジンがかかるものもあるようだが、そのバイクはガスが濃いんだと思う。私のバイクは、冷間時にはチョークを引かないと基本的にエンジンはかからない。今回は夏で気温が高かったからチョーク無しでもどうにかエンジンがかかったのだと思うが、もしもこれが冬だったらエンジンはかからなかっただろう。

 それにしても、チョークレバーの操作方法を間違えるなんて。誰に見られている訳でもないけれど、すごく恥ずかしかった。初心者かよって。いったい何年バイクに乗っているんだよって。
 まあ、いろんな意味で私はかなり疲れたが、エンジンは無事かかった。しばらくしてからチョークレバーを戻す。アイドリングは安定している。エンジンの調子は悪くないようだ。
 本当は走らせるのが良いのだけれど、今回は乗らずに10分ほどアイドリングで回しておいた。これで、キャブレターの中のガソリンも入れ替わっただろうし、オイルも各部に回っただろう。
 しかし、ふとした時に変な思い込みをするものだな。